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恋愛

屋根屋

村田 喜代子

講談社/2014年/307ページ/本体1600円/ISBN 978-4-06-218774-9

翻訳出版はありません。

 雨漏りの修理のためにやってきた男は、大柄で一見不愛想な中年男だった。しかし主婦の「私」は一人、黙々と作業に取り組むその仕事ぶりに惹かれる。やがて彼は重い口を開いて、屋根の上での仕事の苦労や、日本式家屋を雨から守る上での瓦の大切さを語り始める。12年前に妻に先立たれた男は、神経症を患い、仕事中、発作的に屋根から飛び降りたくなるほど追いつめられたことがあった。その危機を、彼は夢日記をつけるという手段によって乗り越えたのだった。いまでは自分の好きなように夢を見る術を身につけたと男は言う。その話に興味をかきたてられ、普段は夢一つ見ない熟睡が自慢の「私」も、夢の世界を意識するようになる。そして屋根屋の導きのもと、いつしか「私」と彼は夢の中で落ち合い、二人で旅を楽しむようになる。自由に空を飛翔し、日本の仏閣からフランスのゴシック式カテドラルまで、大きな建物から建物へとめぐっていく旅の連続である。「私」にとってそれは、夫も高校生の息子もあずかり知らぬところでの、自由と冒険の経験だった。しかし「私」と男の間には、夢の中の相棒というだけではすまない強い感情が芽生え始める。

 作者は、軽妙な語り口のうちに、日常からの離陸を願う主婦の気持ちの揺れを見事に捉え、幻想的な愛のかたちを描き出している。<物欲も性欲も、我執みたいなもんも、体ごと一緒に消えてしまいそう>な不思議な愛の境地が、そこにはたしかに出現しているのだ。(NK)
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村田 喜代子

村田 喜代子

1945年福岡県生まれ。1987年『鍋の中』で芥川賞、1990年『白い山』で女流文学賞、1997年『蟹女』で紫式部文学賞、1998年『望潮』で川端康成文学賞、2010年『故郷のわが家』で野間文芸賞、2014年『ゆうじょこう』で読売文学賞を受賞。

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