
恋愛
ツ、イ、ラ、ク
角川書店(角川文庫)/2007年/544ページ/本体705円/ISBN 978-4-04-183514-2
翻訳出版はありません。
とある小学校二年の少年少女を主役とする人間ドラマが始まる。早くから恋心が芽生えた少女たちは、大人に劣らぬほど複雑な人間関係を築く。やがて中学生になり、彼女たちは性に目覚めていく。中でも森本隼子の青春はひときわ異彩を放つ。彼女は国語教師の河村と激しい恋に落ち、ついに傷ついて卒業していく。隼子の早熟な性体験を中心に、少女たちの生態が揶揄の利いた筆致で生き生きと描き出されている。
十代の恋愛につきまとう、清純で美しく、繊細で傷つきやすいというイメージが、 この作品では一掃された。少女たちは恋をすると、たちまち性におぼれ、一夜のうちに女へと変身する。恋愛と性の境界線は曖昧で、当事者はそんなことには無頓着だ。未成年の彼女たちにとって、ひたむきな愛情と性の謳歌の区別など必要ないのかもしれない。十代の若者の奔放な愛がここまで単刀直入に描かれたのは初めてであろう。とりわけ目を引くのは作家が用意した文体である。絶妙な文章感覚に基づき、異なる文体を効果的に使い分けながら、成長を続ける少女たちの多様な生き方を表現している。
笑いの要素が大胆に持ち込まれたのも特徴だ。恋愛小説でユーモアは扱いにくい が、この作品では諧謔の成分がテキストの中に有機的に組み込まれている。恋愛小説の法則を片っ端から覆した作品だが、いままでにない新鮮さと感動がある。独特の物語展開と多様な語りの合成は、将来にわたって読者の記憶にとどまるであろう。(CK)
十代の恋愛につきまとう、清純で美しく、繊細で傷つきやすいというイメージが、 この作品では一掃された。少女たちは恋をすると、たちまち性におぼれ、一夜のうちに女へと変身する。恋愛と性の境界線は曖昧で、当事者はそんなことには無頓着だ。未成年の彼女たちにとって、ひたむきな愛情と性の謳歌の区別など必要ないのかもしれない。十代の若者の奔放な愛がここまで単刀直入に描かれたのは初めてであろう。とりわけ目を引くのは作家が用意した文体である。絶妙な文章感覚に基づき、異なる文体を効果的に使い分けながら、成長を続ける少女たちの多様な生き方を表現している。
笑いの要素が大胆に持ち込まれたのも特徴だ。恋愛小説でユーモアは扱いにくい が、この作品では諧謔の成分がテキストの中に有機的に組み込まれている。恋愛小説の法則を片っ端から覆した作品だが、いままでにない新鮮さと感動がある。独特の物語展開と多様な語りの合成は、将来にわたって読者の記憶にとどまるであろう。(CK)

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