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小説

ぎぶそん

伊藤 たかみ

ポプラ社(ポプラ文庫)/2010年/246ページ/570円/ISBN 978-4-591-12138-2
初出:2005年ポプラ社より単行本刊行

翻訳出版はありません。

 現代日本の青春にとって欠かせない要素、それは「バンド」活動である。趣味のあう仲間たちとバンドを組み、あこがれのロックグループのコピーに精を出し、そしていつかステージに立つことをめざす。とはいえ、欧米流の“セックス・ドラッグ&ロックンロール”とはまったく異なる、中学生たちの、あくまでかわいらしく、ほほえましいバンドごっこなのである。本書はそうした日本特有ともいうべき、学校に根づいたバンド文化の模様を、ユーモラスかつ叙情的な筆遣いで描いている。

 主人公ガクはアメリカの人気バンド「ガンズ・アンド・ローゼズ」に心酔する中学二年生の男の子。ギターを弾き、歌を歌う。親友の男子マロにベースをまかせ、ドラムは幼なじみの女の子リリイが担当だ。そしてガクは、ギターの腕前抜群の男子がいるといううわさを聞き、ギブソン・フライングVモデルを所有するという、かけるの自宅を訪ねる。ぼろ家にアルコール中毒の祖父と暮らすかけるの加入で、バンド内には多少の摩擦が生じる。「ガンズ」の曲もなかなかうまく演奏できない。それでも4人は、学校の文化祭でステージに立つことを目標にして、心をひとつに合わせ、練習に励むのだ。そしてまた、主人公とリリイの間には淡い恋も芽生える。

 昭和天皇が病に伏した1988年の秋を舞台とする、少年少女の爽やかな物語である。(NK)
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伊藤 たかみ

伊藤 たかみ

1971年生まれ。1995年、早稲田大学政治経済学部在学中、『助手席にて、グルグル・ダンスを踊って』で第32回文芸賞を受賞。2000年、児童書『ミカ!』で第49回小学館児童出版文化賞受賞。2006年『ぎぶそん』で第21回坪田譲治文学賞、同年『八月の路上に捨てる』で第135回芥川賞を受賞。

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