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文化・歴史

日本人にとって美しさとは何か

高階 秀爾

筑摩書房/2015年/256ページ/本体1900円/ISBN 978-4-480-87384-2

本作品は中国語(簡体字、繁体字)、英語、韓国語、ロシア語に翻訳されています。

 日本の伝統建築、寺院や塔、あるいは城を見るときはぜひ、屋根に注意していただきたい。すっと伸びた軒の線が、必ず左右に少しばかり反り上がっているはずだ。かつてペリー提督(1794-1858)が日本に来航し、江戸の町を船上から眺めたとき「屋根ばっかりだ」と述べたという。実際、西洋の建築は壁が主体であるのに対し、日本の建築は屋根に特色がある。屋根が大きく、長く伸びていて軒が深い。それは単に風土が湿潤で、雨や風から家を守る必要があったからというだけではない。美的な嗜好性をも反映しているのである。わずかに反った屋根の描く線は、例えば日本刀の独特なカーブにもつながっている。

 そもそも「カーブ」という英語でそれを表現するのは難しい。西洋人にとってカーブが直線に対立する概念であり、両者ははっきり区別されるべきであるのに対し、日本人は直線がわずかに変化し、曲がった状態を尊ぶ。直線と曲線はひとつながりのものとして捉えられるのであり、そこに独自の美の観念が成り立っている。

 高名な西洋美術史家であるとともに日本の美術や文化にも造詣の深い著者が、本書では西洋や中国と比較しながら、日本ならではの美の考え方を平明に、自在に語る。いにしえの和歌や屏風絵から現代のマンガ表現や携帯の絵文字に至るまで、興味深い具体例の数々を通して、平安時代以来変わらない日本的感性の核心が描き出される。日本文化を(再)発見するために絶好の一冊である。(NK)
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高階 秀爾

高階秀爾

1932年生まれ。大原美術館(岡山県倉敷市)館長、東京大学名誉教授。『20世紀美術』など著書多数。2012年に文化勲章を受章。

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