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小説

東京プリズン

赤坂 真理

河出書房新社(河出文庫)/2014年/536ページ/本体920円/ISBN 978-4-309-41299-3

翻訳出版はありません。

 15歳の「マリ・アカサカ」は1980年、一人で米国に留学した。メイン州の小さな町にある高校で勉強しているうちに、日本についての無知に気づき、自分の国についていろいろ調べるようになった。そんなある日、学校で「天皇の戦争責任」という題のディベートに参加したが、大きな壁にぶつかる。答えが見つからない中、マリは時空を超えて40代になったマリに電話し、あるいは海を越えて、戦争を経験した祖母に聞いたりした。過去と現在、米国と日本、幻想と現実の間を行き来しているうちに、少女マリは米国との戦争や戦後の歴史を少しずつ知るようになる。自信を持って最後のディベートに臨むとき、彼女はもはや勝敗に興味はない。もっと大事なことに気づいたからだ。

 40代半ばの女性が10代の少女の分身になるという設定には深い意味が込められている。10代の少女にとって敗戦は遠い過去だが、40代のマリも戦後の生まれであり、戦争を体験したわけではない。しかし、いまも世代を超えて「あの戦争はいったい何だったのか」という答えのない問いかけが日本人の前に横たわっている。

 太平洋戦争について、戦時中には戦争小説があったし、戦後には反戦小説が登場したが、この小説はそのどちらとも違う。過去の事実を題材とする歴史小説とも一線を画している。誰も試みたことのない手法で、大東亜戦争を扱うという点では文学的冒険といえよう。この未曽有の冒険を見事に成功に導いたのは、作家一流の語りと独創的な作品構成である。(CK)
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赤坂 真理

赤坂真理

1964年生まれ。2012年、少女の目で「戦後」を問う長篇『東京プリズン』で毎日出版文化賞、司馬遼太郎賞、翌年紫式部文学賞を受賞。映画化された『ヴァイブレータ』、野間文芸新人賞受賞作『ミューズ』などの小説以外に、『愛と暴力の戦後とその後』など評論も話題。

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