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自叙伝

叙情と闘争 辻井喬+堤清二 回顧録

辻井 喬

中央公論新社(中公文庫)/2012年/408ページ/本体800円/ISBN 978-4-12-205641-1

翻訳出版はありません

 この回顧録は、経営者と文学者という二つの顔を持った堤清二(ペンネームは辻井喬)の半生を綴ったものである。

 著者は、西武鉄道の創業者で衆議院議長になった堤康次郎の長男として生まれた。そのため、共産主義運動家の履歴を持ちながら西武百貨店の社長になり、セゾングループ代表として活躍し、大衆消費社会の牽引者となった。しかし、彼自身の内面は、詩人・小説家という文学者として生きることを望んでいた。この矛盾と葛藤を、彼はどのように乗り越えようとしたのか。本作品では、その詳細が述べられている。

 この半生記は、昭和34年、衆議院議長だった父親の随員として、米国でマッカーサーに、そして大統領アイゼンハワーに会うところから始まる。そして、平成9年、実の 妹がパリで死に、その葬儀のためパリに向かうところで終わる。当然のことながら、政治家や財界のリーダーたちとの表裏複雑に絡み合った交際、三島由紀夫や武満徹など芸術家たちとの華麗な交流も描かれる。

 しかし、そのきらびやかな人脈に目を奪われてはいけない。一時は、共産党員だったにもかかわらず、「歴史社会に働きかけようという姿勢」を持っていた左翼の人びとを「転向率が高かった」と冷静に見る知性の人である。また、芸術家と政治家は両立してはならない、と考え、「芸術家が政治家として成功するとしたら、それは独裁政治だからだ」を箴言にしていた。(MK)
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辻井 喬

辻井喬

1927年東京都生まれ。詩人・作家、元セゾングループ代表。経営者・堤清二としての活動が知られる一方、精力的な創作活動で多彩な作品を生み出す。著作に『異邦人』(室生犀星賞)、『虹の岬』(谷崎潤一郎賞)、『父の肖像』(野間文芸賞)など多数。2013年逝去。

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