家族
マザーズ
新潮社(新潮文庫)/2014年/615ページ/本体790円/ISBN 978-4-10-131332-0
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金原ひとみは、若くして衝撃的なデビューをして以来、激しいセックスや変態的で先端的な風俗を描くことで多くの読者に刺激を与えてきたが、今回の長編小説『マザーズ』では、そのタイトルが示す通り、子育てをしながら悩み、苦しむ若い母親たちという、ある意味では古典的なテーマに正面から取り組むことになった。おそらく作家自身の結婚、出産、育児という経験の裏付けがあって初めて可能になった作品であろう。
物語は3人の若い母親たちの視点が交替しながら、進んでいく。五月はモデルで、夫との間に娘がいるが、不倫相手の子を妊娠してしまう。ユカは原稿執筆の締め切りに追われる作家だが、夫は週末しか家に戻らず、孤独な子育てと原稿執筆のストレスからドラッグに手を出す。涼子は専業主婦だが、子育てに疲れて息子を虐待してしまう。3人は、みな同じ保育園に子供を預けており、子育てに夫の理解や協力が得られず、すさまじい孤独にさいなまれているという共通点を持っている。
もっとも金原ひとみは、フェミニズム的な立場から社会的問題として子育てを取り上げているわけではない。彼女の功績は、愛と憎しみ、孤独と連帯をめぐる現代小説の一つの豊かな可能性を切り拓いたということだろう。(NM)
物語は3人の若い母親たちの視点が交替しながら、進んでいく。五月はモデルで、夫との間に娘がいるが、不倫相手の子を妊娠してしまう。ユカは原稿執筆の締め切りに追われる作家だが、夫は週末しか家に戻らず、孤独な子育てと原稿執筆のストレスからドラッグに手を出す。涼子は専業主婦だが、子育てに疲れて息子を虐待してしまう。3人は、みな同じ保育園に子供を預けており、子育てに夫の理解や協力が得られず、すさまじい孤独にさいなまれているという共通点を持っている。
もっとも金原ひとみは、フェミニズム的な立場から社会的問題として子育てを取り上げているわけではない。彼女の功績は、愛と憎しみ、孤独と連帯をめぐる現代小説の一つの豊かな可能性を切り拓いたということだろう。(NM)
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