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さまざまな生活

決壊(上・下)

平野 啓一郎

新潮社(新潮文庫)(上)/2011年/480ページ/本体670円/ISBN 978-4-10-129041-6
新潮社(新潮文庫)(下)/2011年/513ページ/本体710円/ISBN 978-4-10-129042-3

本作品は韓国語に翻訳されています。

 平野啓一郎は現代日本文学を代表する中堅作家の一人である。彼が1998年『日蝕』で衝撃的なデビューをしてからすでに23年が経った。『日蝕』は中世フランスを舞台とした小説だったし、彼の最大の長編『葬送』は、19世紀フランスを舞台にしてドラクロアやショパンを描いた徹底的に知的に作られたフィクションで、日本の現実からはかけ離れたものだった。

 節目となるデビュー10年目の2008年に発売された『決壊』ではその彼が、現代日本社会が抱える病巣に正面からぶつかった。時は2002年の秋。京都を初めとする各地で、バラバラに切断された死体の首、手、足などが次々に発見される。生首に添えられた挑戦的な「犯行声明」には、「悪魔」と署名されていた……。この小説が描きだすのは、現代社会に蔓延する暴力と、インターネットが解き放ってしまった人びとの「心の闇」である。いずれ現代社会は復旧ができない「致命的なエラー」を起こし、ダムが溢れるように「決壊」するのではないか。そういう警鐘の意味をこめたタイトルである。

 このすべてが、人間の罪と罰について予言的なヴィジョンをもって迫ったドストエフスキーを思わせる。しかし、『決壊』には神はない。ここで描かれるのは、神なき時代の犯罪なのである。(NM)
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平野 啓一郎

平野啓一郎

1975年愛知県蒲郡市生。北九州市出身。京都大学法学部卒。1999年在学中に文芸誌「新潮」に投稿した『日蝕』により第120回芥川賞を受賞。40万部のベストセラーとなる。以後、一作毎に変化する多彩なスタイルで、数々の作品を発表し、各国で翻訳紹介されている。2004年には、文化庁の「文化交流使」として一年間、パリに滞在した。
著書に、小説『葬送』、『滴り落ちる時計たちの波紋』、『決壊』、『ドーン』、『空白を満たしなさい』、『透明な迷宮』、『マチネの終わりに』、『ある男』、『本心』等、エッセイ・対談集に『私とは何か 「個人」から「分人」へ』、『「生命力」の行方~変わりゆく世界と分人主義』、『考える葦』、『「カッコいい」とは何か』等がある。
長編英訳一作目となった『ある男』英訳『A MAN』に続き、『マチネの終わりに』英訳『At the End of the Matinee』も2021年4月刊行。

翻訳出版に関する連絡先について

株式会社コルク
〒150-0001東京都渋谷区神宮前1-11-11-506

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