
故郷愛
島はぼくらと
講談社(講談社文庫)/2016年/432ページ/本体700円/ISBN 978-4-06-293451-0
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朱里、衣花、源樹と新は冴島という瀬戸内海の離島に住んでいる高校生だ。島には高校がないため、いつも同じ時刻にフェリーに乗って登下校する。この小説は多感な青春期を過ごす4人の喜怒哀楽と、彼らの目に映った周りの人たちの日常を地方風俗画のように描き上げている。
離島に住んでいながら、毎日本土に通うという設定は物語の展開に奥行きをもたらした。彼らは島の人間であり、故郷のことをよく知っている。一方、毎日島を離れて、本土で学校生活を送るから、離島から外の世界を眺めると同時に、外から島を眺めるという視点も併せ持っている。故郷を脱出してきた移住者の姿を捉えるには、この移動的・中間的なまなざしは力を発揮する。そして、他者を見ている間に、4人の高校生も成長し、恋愛や友情などさまざまな人間関係を経験する。
細部に至るまで緻密に構成されている。人にはそれぞれ違う物語があるのに、この作品の登場人物の人生は互いに無関係の断片ではなく、一つの物語の中に巧みに組み込まれている。
何よりも律動的な文体が小気味よい。地方生活ののどかさが、離島の暮らしに特有の閉塞感とともに、繊細な筆致で捉えられている。青春小説としては珍しい設定で、大都市の読者を意識した手法も功を奏している。(CK)
離島に住んでいながら、毎日本土に通うという設定は物語の展開に奥行きをもたらした。彼らは島の人間であり、故郷のことをよく知っている。一方、毎日島を離れて、本土で学校生活を送るから、離島から外の世界を眺めると同時に、外から島を眺めるという視点も併せ持っている。故郷を脱出してきた移住者の姿を捉えるには、この移動的・中間的なまなざしは力を発揮する。そして、他者を見ている間に、4人の高校生も成長し、恋愛や友情などさまざまな人間関係を経験する。
細部に至るまで緻密に構成されている。人にはそれぞれ違う物語があるのに、この作品の登場人物の人生は互いに無関係の断片ではなく、一つの物語の中に巧みに組み込まれている。
何よりも律動的な文体が小気味よい。地方生活ののどかさが、離島の暮らしに特有の閉塞感とともに、繊細な筆致で捉えられている。青春小説としては珍しい設定で、大都市の読者を意識した手法も功を奏している。(CK)

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