
夫婦愛
冥土めぐり
河 出 書 房 新 社(河出文庫) /2015年 /176ペ ー ジ / 本 体490円 /ISBN 978-4-309-41338-9
本作品は中国語(繁体字、簡体字)、英語、イタリア語に翻訳されています。
新幹線に乗って、夫婦が東京から小旅行に出かける。36歳の夫・太一は、8年前、突然脳の発作に襲われ、四肢が不自由になった。それは妻の奈津子にとっても、思いもよらない試練だった。とはいえ、その8年間は奈津子の人生の中で、むしろ以前よりましと思える期間だった。結婚前の、自分の母および弟と暮らした日々は、彼女にとって思い出したくもないおぞましい記憶だった。<それは貧困でも、孤独でも、病気でもない、なにものかだ>。夫との旅は、その「なにものか」をよみがえらせ、それと対峙する機会となる。
行く先のホテルは、かつては高級リゾートホテルとして知られ、奈津子の母にとってなじみの場所だった。それがすっかり格を下げ、安価で宿泊できる宿となっている。ホテルの没落は、奈津子にとって父亡き後の実家の没落と重なりあう。裕福だった過去に執着する母と弟は浪費をやめず、身勝手なふるまいの数々によって奈津子を脅かし、苦しめ続けてきた。だがいま、旅先で奈津子は、体の不自由な夫が、そんな家庭の呪いとは無縁の、不思議な強さを持った人間であることを発見していく。一人の女性の困難な生を通して、現代の日本社会の苦しみと、そこに薄日のように差す希望とを描き出した、芥川賞受賞作品である。(NK)
行く先のホテルは、かつては高級リゾートホテルとして知られ、奈津子の母にとってなじみの場所だった。それがすっかり格を下げ、安価で宿泊できる宿となっている。ホテルの没落は、奈津子にとって父亡き後の実家の没落と重なりあう。裕福だった過去に執着する母と弟は浪費をやめず、身勝手なふるまいの数々によって奈津子を脅かし、苦しめ続けてきた。だがいま、旅先で奈津子は、体の不自由な夫が、そんな家庭の呪いとは無縁の、不思議な強さを持った人間であることを発見していく。一人の女性の困難な生を通して、現代の日本社会の苦しみと、そこに薄日のように差す希望とを描き出した、芥川賞受賞作品である。(NK)

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