
その他の愛
犬身
朝日新聞出版(朝日文庫)/2010年/上:337ページ/本体620円/ISBN 978-4-02-264564-7、下:294ページ/本体600円/ISBN 978-4-02-264565-4
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松浦理英子の長編小説『犬身』は、人間が犬に変身し、自分が心を寄せる相手の飼い犬となる、という奇想天外な設定に基づく小説である。その一方で、異常な愛憎に満ち満ちた陰惨でリアルな家族関係を配し、犬と人間の魂が触れ合う純粋さが対照的に浮かび上がってくる。松浦は1993年、やはり読者を驚かせる奇抜な設定に基づいた『親指Pの修業時代』という大作で独自のセクシュアリティを探索したことで知られているが、今回の作品では通俗的な物語としての枠組みを恐れることなく、さらに自由に想像力を膨らませ、それがかえって読者の琴線に触れることとなった。
小説の中で、犬に変身した主人公の女性が<わたしの魂は傷んですごくまずくなっていると思う>というのに対して、フサの魂を要求しているメフィストフェレス的な男性は、<心配するな。ある種の肉と同じで、よく叩いた魂はうまいんだ>と答える。このやりとりに典型的に見られる絶妙なユーモアと切実さのおかげで、この小説は現代小説の世界に新しい光景を切り開くことができた。なお、この小説では、犬に関連した言葉遊びがいたるところに仕掛けられており、タイトルの「犬身」にも、「犬の身体」と「献身」の二つの意味がかけられている。(NM)
小説の中で、犬に変身した主人公の女性が<わたしの魂は傷んですごくまずくなっていると思う>というのに対して、フサの魂を要求しているメフィストフェレス的な男性は、<心配するな。ある種の肉と同じで、よく叩いた魂はうまいんだ>と答える。このやりとりに典型的に見られる絶妙なユーモアと切実さのおかげで、この小説は現代小説の世界に新しい光景を切り開くことができた。なお、この小説では、犬に関連した言葉遊びがいたるところに仕掛けられており、タイトルの「犬身」にも、「犬の身体」と「献身」の二つの意味がかけられている。(NM)

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