
東北
吉里吉里人
新潮社(新潮文庫)/1985年/上:501ページ/本体710円/ISBN 978-4- 10-116816-6、中:502ページ/本体710円/ISBN 978-4-10-116817-3、下: 520ページ/本体710円/ISBN 978-4-10-116818-0
本作品は韓国語に現在翻訳中。
とある6月、小説家・古橋健二は取材のため青森行きの夜行急行列車に乗っていた。ところが列車は早朝、岩手県一ノ関近くで緊急停車する。車内には猟銃で武装した男たちが乗り込んできて、乗客にパスポートを見せるよう要求する。この朝、東北の寒村・吉里吉里村は突如、日本からの分離独立を一方的に宣言、日本人ではなく吉里吉里人の国家となったのである。日本政府の農業軽視政策に対するふんまんを押さえ切れなくなった農民たちは、藤原清衡が隠匿したという伝説の黄金を軍資金として、金本位制にもとづく独立国を立ち上げたのだった。
古橋は新しい国を訪れた最初の作家として、独立騒ぎのてんやわんやの中に巻き込まれていく。彼は第一回吉里吉里文学大賞を授けられたあげく、ついには大統領の地位にまで上り詰める。だが日本国は吉里吉里国を断固として認めず、反乱・騒擾罪を適用し、自衛隊を派遣して鎮圧にかかる。吉里吉里人たちは次々に奇抜な策をくりだして抵抗するが、はたして独立を貫くことができるのか?
戦後日本に対するラディカルな批判を含みつつ、全編ユーモアと奇想の横溢するこの大長編は、国家の近代化の流れの中で常に損な役回りを押しつけられてきた「東北」の喜ばしい復権の書であると同時に、日本語の活力を存分に駆使したユートピア小説として、比類のない達成度を示している。(NK)
古橋は新しい国を訪れた最初の作家として、独立騒ぎのてんやわんやの中に巻き込まれていく。彼は第一回吉里吉里文学大賞を授けられたあげく、ついには大統領の地位にまで上り詰める。だが日本国は吉里吉里国を断固として認めず、反乱・騒擾罪を適用し、自衛隊を派遣して鎮圧にかかる。吉里吉里人たちは次々に奇抜な策をくりだして抵抗するが、はたして独立を貫くことができるのか?
戦後日本に対するラディカルな批判を含みつつ、全編ユーモアと奇想の横溢するこの大長編は、国家の近代化の流れの中で常に損な役回りを押しつけられてきた「東北」の喜ばしい復権の書であると同時に、日本語の活力を存分に駆使したユートピア小説として、比類のない達成度を示している。(NK)

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