
沖縄
魂込め(まぶいぐみ)
朝日新聞出版(朝日文庫)/2002年/224ページ/本体480円/ISBN 978-4-02-264301-8
本作品はフランス語、韓国語に翻訳されています。
「水滴」で1997年、芥川賞を受賞した作者初の短篇集。同賞の選考委員を務めた作家の日野啓三は、この作品集を「豊かな南の島の自然、そこに残る神話伝承を小説の材料として利用するだけでなく、それらの素材を、先の戦争の傷も含めて現在の沖縄の現実といかに有機的に組み合わせて、一個の小説世界を創り出すか、を工夫し実験している」と、非常に高く評価した。
表題の「魂込め」は、御願を捧げる祈祷師の女性ウタが主人公。夜、海岸で一人、 三線を奏でていた男が、唄いながら海亀に魂を奪われるように意識をなくす。その魂を取り戻し、魂を込めようとウタが幾日祈り続けても、男は生き返らない。男の母親は、戦争中、海亀の卵を食糧にしようとして掘り出している時に亡くなった。男は海 亀の子供のように、海へ戻って行ったのか……。
目取真の作品世界は、どれも現実と夢想、現代と神話の世界が地続きになっている。なかでも登場人物の魂が読後、何日も離れぬほど痛ましくも神々しい境地を描いた収録作「面影と連れて」は忘れがたい。幼い頃から積み重なる悲惨な体験を抱える少女は、いつしか死者の姿が見えるようになり、この世から魂をなくしてもなお、ガジマルの枝に腰掛けながら生者に語りかける。自分の物語を伝承したいという人間の思いは、これほどまでに強く、重いのだ。
沖縄の現実を文学にすることは一筋縄ではいかないが、目取真は今も南の島で身体の感覚を研ぎ澄ませ、創作に専念している。(OM)
表題の「魂込め」は、御願を捧げる祈祷師の女性ウタが主人公。夜、海岸で一人、 三線を奏でていた男が、唄いながら海亀に魂を奪われるように意識をなくす。その魂を取り戻し、魂を込めようとウタが幾日祈り続けても、男は生き返らない。男の母親は、戦争中、海亀の卵を食糧にしようとして掘り出している時に亡くなった。男は海 亀の子供のように、海へ戻って行ったのか……。
目取真の作品世界は、どれも現実と夢想、現代と神話の世界が地続きになっている。なかでも登場人物の魂が読後、何日も離れぬほど痛ましくも神々しい境地を描いた収録作「面影と連れて」は忘れがたい。幼い頃から積み重なる悲惨な体験を抱える少女は、いつしか死者の姿が見えるようになり、この世から魂をなくしてもなお、ガジマルの枝に腰掛けながら生者に語りかける。自分の物語を伝承したいという人間の思いは、これほどまでに強く、重いのだ。
沖縄の現実を文学にすることは一筋縄ではいかないが、目取真は今も南の島で身体の感覚を研ぎ澄ませ、創作に専念している。(OM)

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