2022年の国際アンデルセン賞作家賞に日本から推薦された作家の、幼い子どもの内面にしなやかに寄り添った秀逸な作品である。
「母親が家を出て行ってしまったために、私たちはお父さんと妹と三人で生きていくんだ」と主人公の少女みきの冒頭のモノローグから、離婚家族かなと思わされるが、実はお産のために母親は実家に行っている。この導入部から、新しい子が生まれることで両親の関心が自分から奪われるのではないかという、みきの不安感がただよう。そして、1つ違いの妹のるいの下に弟が生まれ、みんなから「お姉ちゃんなんだから」といわれるが、赤ちゃんがかわいいのかどうか、みきにはよくわからない。両親や祖母や祖母の姉、妹のるい、公園で出会った心が3歳のままの57歳になるおばさんとその弟など、さまざまな人たちとの交流を通して、みきの気持ちが少しずつだが微妙に変化する。そしてみきは、次第に弟が生まれてよかったと思うようになっていく。弟が生まれたことで、なんとなく疎外された気分に陥った少女が、弟を優しく受け止められるようになる心の変化が、巧みな描写力によって心地よく読み手に伝わってくる。作者は、この作品で伝統のある野間児童文芸賞を受賞している。(NA)
「母親が家を出て行ってしまったために、私たちはお父さんと妹と三人で生きていくんだ」と主人公の少女みきの冒頭のモノローグから、離婚家族かなと思わされるが、実はお産のために母親は実家に行っている。この導入部から、新しい子が生まれることで両親の関心が自分から奪われるのではないかという、みきの不安感がただよう。そして、1つ違いの妹のるいの下に弟が生まれ、みんなから「お姉ちゃんなんだから」といわれるが、赤ちゃんがかわいいのかどうか、みきにはよくわからない。両親や祖母や祖母の姉、妹のるい、公園で出会った心が3歳のままの57歳になるおばさんとその弟など、さまざまな人たちとの交流を通して、みきの気持ちが少しずつだが微妙に変化する。そしてみきは、次第に弟が生まれてよかったと思うようになっていく。弟が生まれたことで、なんとなく疎外された気分に陥った少女が、弟を優しく受け止められるようになる心の変化が、巧みな描写力によって心地よく読み手に伝わってくる。作者は、この作品で伝統のある野間児童文芸賞を受賞している。(NA)