メニュー開閉ボタン
『口で歩く』の表紙画像

試し読み

  • サンプル画像1
  • サンプル画像2
  • 8歳から
  • ロングセラー

口で歩く

丘 修三 作
立花 尚之介 絵

小峰書店/2000年/95ページ/ISBN 978-4-338-17006-2

本作品は韓国語に翻訳されています。

 主人公は「二十数年ものあいだ、ずっとねたっきり」の男性、タチバナさん。重い障害があるそのタチバナさんが、ある晴れた朝「散歩びよりだ」と思うところから物語は始まる。するとおかあさんは、ベッドの足に車輪のついた乗り物に立花さんを乗せる。ベッドの下にはチリ紙、タオル、スプーン、コップ、ストロー、それに尿瓶までそろっていて、あとは手帳と財布と手の代わりになる棒を持てば、準備完了。そこからは、通りかかった人を「すみませーん!」と呼びとめては、押して行ってもらうというのがタチバナさんのユニークな散歩スタイルだ。また、手を貸してくれる人々が、必ずしも善人ばかりではないというところもおもしろい。受験に悩む青年、体を治す「神様」を紹介すると怪しげな勧誘をしてくるおばさん、家族に邪険にされていると愚痴をこぼすおじいさんなど、それぞれに事情を抱えた人々との出会いにリアリティーがある。

 そのうえで、最大の魅力は、タチバナさんのつきぬけた明るさだ。手の代わりに使う棒を「なまけん棒」(「なまける」をもじった造語)と名付けたり、しつこいおばさんに尿瓶を使わせようとしたり……。まさに「口」を使って進んでいく、障害をものともしないタチバナさんの工夫された生活ぶりとユーモア感覚に、手を貸した人々のほうが救われていくこともある。障害の有無をこえて、支え合える社会が見えてくる物語だ。(OM)
『口で歩く』の表紙画像

試し読み

  • サンプル画像1
  • サンプル画像2

丘 修三

おか しゅうぞう
1941年、鹿児島県に生まれ、幼少期を熊本県で過ごす。養護学校教諭を経て作家活動に入る。新美南吉児童文学賞、坪田譲治文学賞、小学館文学賞などを受賞。著作に『風にふかれて』、『ぼくのお姉さん』、『少年の日々』、『ウソがいっぱい』、『けやきの森の物語』、『福の神になった少年』、『あんちゃんが行く』など多数。

立花 尚之介

たちばな なおのすけ
1945年、群馬県に生まれる。フリーライターをしながら絵を描き、畑正憲「ムツゴロウ」シリーズの連載で絵を担当したのを機に絵に専念。絵本に『ふしぎふにゃふにゃフランケン』(近藤雅則/企画・原案)」、挿画に『虹のぞうさん』(春名江吏子/詩)、『ぼくのじんせい』(丘修三/文)、エッセイに『男は急にとまれない』など。

翻訳出版に関する連絡先

株式会社小峰書店
Tel.: 03-3357-3521

スクロールトップボタン