メニュー開閉ボタン
『おとうさんがいっぱい』の表紙画像

試し読み

  • サンプル画像1
  • サンプル画像2
  • 10歳から
  • ロングセラー

おとうさんがいっぱい

三田村 信行 作
佐々木 マキ 絵

理論社/2003年/208ページ/ISBN 978-4-652-00514-9

初版年 1975年

本作品は韓国語に翻訳されています。

 普通の日常生活の時間や空間がよじれてしまったような、不思議でちょっと怖い話が5編収められた短編集。最初の「ゆめであいましょう」では、夢の中の少年と夢を見ている少年の、どちらが自分なのかわからなくなってしまう。「どこにもゆけない道」では、いつもとは違う道を通って学校から帰ろうとした少年は、なかなか自宅にたどり着けない。やっと家に着いたと思ったら、両親が恐怖で顔を引きつらせている姿をちらっと目にしたまま、少年はクラゲのような軟体動物に変身している。「ぼくは五階で」も、主人公の少年がいつもと同じ団地の自分の家から、どうやっても出ることが出来ない、まるで空間の迷路に迷い込んでしまうような恐怖感がリアルだ。表題作の「おとうさんがいっぱい」は、家の中にお父さんがいるのに、お父さんから電話がかかってきたところから始まる。次々とお父さんが増え、3人のお父さんが自分こそ本物だと主張し合う。そのうち政府は、子どもにひとりだけ父親を選ばせて政府が認定書を渡し、それ以外の父親は国家の手で管理されることになるという何とも怖い結末だ。「かべは知っていた」では、おとうさんが壁の中に消えて行ってしまう。どの作品も、誰もが確かだと思って疑わない現実が、奇妙に歪んでしまう不思議な感覚を通して、家族とは、親子とは、そして自分が今この世界に生きているということは、どういうことなのかを考えさせられる。(NA)
『おとうさんがいっぱい』の表紙画像

試し読み

  • サンプル画像1
  • サンプル画像2

三田村 信行

みたむら のぶゆき
1939年、東京に生まれる。大学在学中より童話を書きはじめ、不条理な話を集めた短篇集『おとうさんがいっぱい』で注目を集める。巖谷小波文芸賞、日本児童文学者協会賞など受賞。著作に『すっとびぎつね』、『風を売る男』、「風の陰陽師」シリーズ、「妖怪道中膝栗毛」シリーズ、『ものまね鳥を撃つな』、『オオカミの時間〜今そこにある不思議集』、評伝『漱石と熊楠』などがある。

佐々木 マキ

ささき まき
1946年、兵庫県に生まれる。漫画家、イラストレーター、絵本作家。1966年漫画雑誌『ガロ』でデビュー。1973年最初の絵本『やっぱりおおかみ』を発表。その後『ぼくがとぶ』、『変なお茶会』、『ぶたのたね』、「ムッシュ・ムニエル」シリーズ、「ねむいねむいねずみ」シリーズ、『へろへろおじさん』など多くの絵本を著す。講談社出版文化賞絵本賞受賞。他に童話、エッセイ、マンガ作品集など。

翻訳出版に関する連絡先

株式会社理論社
海外ライツ担当
Email: rights@rironsha.co.jp

スクロールトップボタン