徳治郎というのは、この本の主人公で語り手でもある「ボク」の祖父の名前。祖父は、祖母が亡くなってからひとりで暮らしている。耳が遠く、しかも頑固でへそ曲がり。お盆に家族が集まっても、祖父はひとりで黙ってテレビを見ている。口数が少なく気難しい祖父だが、ボクに竹とんぼを作ってくれたり、裏山でカブトムシを取ったり、自然の素晴らしさを教えてくれ、少しずつ昔の話もしはじめる。日本に大震災のあった1923年の生まれだという祖父の子ども時代の話はおもしろい。勉強はできないが運動会では主役。山から栗やヤマブドウなど取って来るばかりか、よその畑に忍び込んでトマトやビワや夏みかんを盗み、捕まるとひどい目に遭うから命がけだったなどと平気で話す。祖父は両親も手を焼く不良少年だったのだ。
主人公の少年「ボク」は、4歳の時から小学6年生まで、大好きな祖父が心筋梗塞で倒れ次第に死に向かっていくのに寄り添う。それはまた、頑固者の祖父の人生を濃密に浮かび上がらせるとともに、祖父が生きた時代と暮らしを今に伝え、「ボク」の現在に繋がる家族の歴史とも重なるのだ。祖父の介護をめぐる家族のやりとり、秘められた祖父の戦争体験などもからめながら、孫との交流の中からユニークな祖父の生きざまが感傷を交えず克明に伝わってくる。祖父との豊饒な記憶のすべてが、孫の「ボク」への人生の貴重なプレゼントのようだ。(NA)
主人公の少年「ボク」は、4歳の時から小学6年生まで、大好きな祖父が心筋梗塞で倒れ次第に死に向かっていくのに寄り添う。それはまた、頑固者の祖父の人生を濃密に浮かび上がらせるとともに、祖父が生きた時代と暮らしを今に伝え、「ボク」の現在に繋がる家族の歴史とも重なるのだ。祖父の介護をめぐる家族のやりとり、秘められた祖父の戦争体験などもからめながら、孫との交流の中からユニークな祖父の生きざまが感傷を交えず克明に伝わってくる。祖父との豊饒な記憶のすべてが、孫の「ボク」への人生の貴重なプレゼントのようだ。(NA)