松井五郎さんはタクシーの運転手だ。松井さんの空色のタクシ-には変わったお客さんがやってくる。正直でまじめな松井さんは、どのお客さんにも丁寧に対応し、言われた場所にタクシーを走らせる。春のある日、男の子の姿で現れ、パンクの修理を手伝ってくれた子ギツネ。真夏の午後、空襲で死んだ息子たちに会いに行くお母さん。並木の葉が黄色く色づく秋、病気の母親のもとに急ぐ山ねこのお医者さん。寒い冬の日に乗ってきたのは、人間として都会でくらすクマ紳士だった…。不思議なお客さんを乗せた松井さんのタクシーは、いつのまにか現実とは異なる場所や時間にすべり込んでいく。日常と非日常が混じり合い、時間の隙間をのぞき込むような小さなエピソードの中に親子の愛、戦争の悲惨さなどをさりげなく盛り込んだ幼年文学。物語の楽しさを知り始めた子どもたちにうってつけだ。
収録の8話はそれぞれ完結した物語として読むことができるし、全体を読めば、春夏秋冬、四季のうつろいが見事に描かれていることがわかる。かすかに残る夏みかんのにおい、ぎらぎら反射する真夏の強い光、金色の稲の穂、ぴりっと冷たい冬の空気…。読者は、季節のにおい、空気、色などを五感で受け止めることができる。松井さんの暖かな人柄を伝える北田卓史の素朴なタッチの挿絵もよい。
続編に『車のいろは空のいろ 春のお客さん』、『車のいろは空のいろ 星のタクシー』がある。(SJ)
収録の8話はそれぞれ完結した物語として読むことができるし、全体を読めば、春夏秋冬、四季のうつろいが見事に描かれていることがわかる。かすかに残る夏みかんのにおい、ぎらぎら反射する真夏の強い光、金色の稲の穂、ぴりっと冷たい冬の空気…。読者は、季節のにおい、空気、色などを五感で受け止めることができる。松井さんの暖かな人柄を伝える北田卓史の素朴なタッチの挿絵もよい。
続編に『車のいろは空のいろ 春のお客さん』、『車のいろは空のいろ 星のタクシー』がある。(SJ)