岩手県遠野市は、昔話の里として知られる。三方を山に囲まれたこの地で、人びとは、山や川、野などにひそむ不思議なものたちと関わり合いながら暮らしてきた。その生活の中から数々の昔話が生まれ、語り継がれてきたのだ。民俗学者の柳田國男は、遠野出身の佐々木喜善が遠野の人びとから聞き集めた話をまとめ、1910年に『遠野物語』を発表した。
本書は子ども時代を遠野で暮らした柏葉幸子が、この『遠野物語』から、子どもに伝えたい話を選んで再話をした作品だ。日本の昔話に登場するカッパは、頭に水を入れたお皿、背中に甲羅、手足に水かきがあり、緑色の姿が一般的なイメージだが、遠野のカッパは顔が赤い。その遠野のカッパ、ズモが語り手となり、この地に住む不思議なものたちが登場する12の話を紹介する。
子どもの姿をした家の神様「ザシキワラシ」、山の中に突然あらわれる家「マヨイガ」、人に悪さをする年を取った獣「フッタチ」……。彼らはときにかわいかったり、怖かったりする。悲しく、残酷な一方で、ユーモラスでもあり、それぞれが個性的だ。めでたしめでたしでは終わらない話、理不尽に感じる話もあるが、遠野では、昔から伝わる話をそのまま子や孫に「ほんとうのこと」として語り継いできた。佐々木喜善のひいばあさんの話も語られる。思い残すことがあったのか、死んだ27日後、皆の前に現れたそうだ。今も遠野では不思議なものたちが、人びととともに暮らしている。(SJ)
本書は子ども時代を遠野で暮らした柏葉幸子が、この『遠野物語』から、子どもに伝えたい話を選んで再話をした作品だ。日本の昔話に登場するカッパは、頭に水を入れたお皿、背中に甲羅、手足に水かきがあり、緑色の姿が一般的なイメージだが、遠野のカッパは顔が赤い。その遠野のカッパ、ズモが語り手となり、この地に住む不思議なものたちが登場する12の話を紹介する。
子どもの姿をした家の神様「ザシキワラシ」、山の中に突然あらわれる家「マヨイガ」、人に悪さをする年を取った獣「フッタチ」……。彼らはときにかわいかったり、怖かったりする。悲しく、残酷な一方で、ユーモラスでもあり、それぞれが個性的だ。めでたしめでたしでは終わらない話、理不尽に感じる話もあるが、遠野では、昔から伝わる話をそのまま子や孫に「ほんとうのこと」として語り継いできた。佐々木喜善のひいばあさんの話も語られる。思い残すことがあったのか、死んだ27日後、皆の前に現れたそうだ。今も遠野では不思議なものたちが、人びととともに暮らしている。(SJ)