主人公の少年みち夫は、両親の都合で夏休みの1ヶ月を父親の田舎で過ごすことになる。みち夫の父は実家との間にわだかまりがあり、ほとんど絶縁状態だった。だから、みち夫にとっても父の田舎は行ったことがなく、まったくはじめての体験なのだ。村で、しばらく廃れていた米俵を持ち上げて力比べをする伝統行事が復活し、みち夫も参加する。子ども用の俵を何とか持ち上げるが、その拍子にひっくり返ってしまう。みち夫は恥ずかしくて会場を逃げ出すが、そこでヒスイという少女に出会う。そしてそこへ、生贄を求める神が、その対象となる少女の家の屋根に目印として立てるとされる「白羽の矢」が飛んできて大騒ぎとなる。ミョウガ臭い息を吹きかけ人々に忘れ物をさせる神、ブタ猫と呼ばれる巨大な猫神、畑の神、貧乏神のふりをした福の神、村に織物を伝えたという髪が長くて猫の目をしたネコメ、沼の神様などなど、伝統社会において人々と奇妙な親和関係を持ち続けてきた、怪しげな神様や妖怪たちが次々と登場する。そこには日本人の伝統文化や自然観も巧みに投影されている。
みち夫は、人間臭くてユーモラスな土着の神々や妖怪との不思議な出会いを通して、みち夫とヒスイに向かって放たれた白羽の矢の秘密を解明していく。まるでタイムスリップしたような素朴な村での、ミステリアスでスリリングなひと夏の冒険物語は、みち夫の自立への第一歩であり、愛への目覚めでもあった。そして父親の故郷での不思議な体験を通し、両親とのゆるぎない絆を確認することにもなるのだ。(NA)
みち夫は、人間臭くてユーモラスな土着の神々や妖怪との不思議な出会いを通して、みち夫とヒスイに向かって放たれた白羽の矢の秘密を解明していく。まるでタイムスリップしたような素朴な村での、ミステリアスでスリリングなひと夏の冒険物語は、みち夫の自立への第一歩であり、愛への目覚めでもあった。そして父親の故郷での不思議な体験を通し、両親とのゆるぎない絆を確認することにもなるのだ。(NA)