くしゃみ、しゃっくり、いびき、おなら、あくびという生理現象を題材とする昔話仕立ての愉快な5つのお話を伝える短編集。「はくしょん」という奇妙な名前の若者の母親は、「くしゃみのおっかあ」と呼ばれるほどものすごいくしゃみの持ち主だ。そのはくしょんが運だめしをしようと、おっかあのくしゃみで山の向こうまで吹き飛ばしてもらい、長者の婿になる(「くしゃみくしゃみ天のめぐみ」)。とめ吉は誤って梅干しの種を飲み込んでから、しゃっくりをとめられなくなってしまうが、そのしゃっくりのおかげで、嫁さんと財産を手に入れる(「とめ吉のとまらぬしゃっくり」)。ほかにどえらいいびきの持ち主、かん太が天にのぼってかみなりさまになる話(「かん太さまのいびき」)、おならに悩んでいたおじいさんが、最後は鶯の声の音と梅の香りのおならをするようになり、殿さまにほめられる話(「梅の木村のおならじいさん」)、大めしぐらいで、寝てばかりいるあや太郎のお腹の中に住みつき、あくびのたびに出たり入ったりする雀たちが恩返しをする話(「あくびあや太郎」)がある。
どの話も奇想天外の展開でユーモアたっぷりに描かれ、のんきで大らかな主人公たちにはハッピーな結末が用意されている。勢いのあるタッチで水墨画風に描かれた絵は、昔話のような物語の世界をよく伝えている。ストーリーテリングの名手でもある著者の豊かな語感、リズムある文章を声に出して楽しみたい作品。(SJ)
どの話も奇想天外の展開でユーモアたっぷりに描かれ、のんきで大らかな主人公たちにはハッピーな結末が用意されている。勢いのあるタッチで水墨画風に描かれた絵は、昔話のような物語の世界をよく伝えている。ストーリーテリングの名手でもある著者の豊かな語感、リズムある文章を声に出して楽しみたい作品。(SJ)