大学の生物学助教授のぽっぺん先生は、大学構内にある「帰らずの沼」の生態系について研究している。ある日昼食中に、羽が桃色のウスバカゲロウの珍種を見つける。これは論文に書き加えねばと、無我夢中になって追いかけていくうちに、あろうことかウスバカゲロウに変身してしまうのだ。カゲロウの命は儚く、先生はあえなく死んでしまう。ところが、死骸が鼻長魚に食べられて、先生は鼻長魚になって命が復活する。鼻長魚になった先生は、カワセミに食べられカワセミに変身して美しいカワセミの娘に恋をする。愛は実って一緒に巣穴を作り、ヒナを育てて幸せの絶頂だったところをイタチに襲われる。ヒナを守り、イタチに食われてイタチに生まれ変わったぽっぺん先生は、馬に食べてもらい、馬肉になって人間に戻ろうと企てるものの大失敗。その後も、キノコになったりアリになったり、最後はアリ地獄に落ちそうになったところをハンミョウに助けられ、もとの自分であるぽっぺん先生がいる食堂に運んでもらい、食事中の先生のお箸の先に必死で飛び移って人間に戻る。大学構内にある沼を舞台に、食いつ食われつの食物連鎖を、先生自身が身をもって体験し、沼にいる生物たちの奇妙な習性や沼の生態系が、ユーモラスに紹介されていく奇想天外なファンタジーだ。同作品は、第4回赤い鳥文学賞を受賞。テレビアニメにもなった。(NA)