日本の昔話を紹介する本は数えきれないくらいたくさん出版されてきている。その中でこの本が卓越している点は3つある。1つ目は、「ナルニア国ものがたり」や「指輪物語」など、多くの海外文学を日本語に翻訳紹介し、日本の現代児童文学にさまざまな影響を与えた著者が、国際的な物語の知見を活かして13編を精選していること。そのため、昔話としてよく知られている「桃太郎」は、戦時中の戦意高揚のために便宜的に使われたこともあってか、この本には載っていない。2つ目は、『幼い子の文学』などの著書がある作者が、幼児が読み聞かせてもらっても、6歳くらいの子どもたちが自分で読んでも楽しめる話を選んでいること。そのために、幼い子どもがわかる言葉や表現とともに、リズミカルなオノマトペがユーモラスに活かされている。3つ目は、もともと方言で語られている原話を標準語に置き換えながらも、語りのリズムを生かし、会話にはできるだけ方言のニュアンスを残していることから、日本各地に伝承されてきた口承文学のエキスを見事に反映した物語になっていることだ。
灰をまくと枯れ木に花が咲く「花さかじい」も、よく知られている話とは趣が違うところが魅力的。「鼠の相撲」「猿の婿入り」「豆子地蔵」「雀の仇討」「三枚のお札」など、選び抜かれた13の不思議なお話のそれぞれが、日本の昔話ならではの笑いやペーソスがあって味わい深い。(NA)
灰をまくと枯れ木に花が咲く「花さかじい」も、よく知られている話とは趣が違うところが魅力的。「鼠の相撲」「猿の婿入り」「豆子地蔵」「雀の仇討」「三枚のお札」など、選び抜かれた13の不思議なお話のそれぞれが、日本の昔話ならではの笑いやペーソスがあって味わい深い。(NA)