江戸時代を舞台にした5篇のファンタジー短編集。
「立花たんぽぽ丸のこと」では、人を斬るのが嫌いな貧乏侍・六平太の前に、300年生きているサルが現れて古い刀をくれる。その刀は、六平太が構えただけで鼻にぽっとたんぽぽが咲き、相手が笑いだすので、戦わずして勝てるという不思議な力を持っていた。
「草冠の花嫁」の主人公である記憶喪失の流れ者・清七は豆腐屋で働いているが、油揚げを買いに来た少女と話すうちに少しずつ記憶が戻り、少女が仕える姫と清七がもとは夫婦だったことや、自分の本来の姿がキツネだったことを思い出す。
「おはるの絵の具」では、絵師見習いの新吉が春の野原で写生をしていると、おはるという少女に出会う。新吉が絵の具に不自由していると聞くと、おはるは絵の具を作ってきて自分の姿も描いてくれとたのむ。出世階段を登りはじめて忙しくなった新吉だが、おはるとの約束を思い出して絵を見せに行くと、おはるは少しずつ消えていき、雪の上に倒れていたのは虹色のチョウだった。
「龍ケ関」では、人間に変身したクマの上田角之進が、クマのすむ森を保全するため、ほかのクマたちの助けを借りて、川の氾濫を防ぐダムを築く。
「おせつネコかぶり」では、少女おせつが父親の怪我を治そうと、ネコたちが集まる不思議な時空に入り込み、特別な皮をかぶって自分もネコになってみる。
どれも不思議な趣の短編だが、よくまとまっていて、おもしろい。それぞれの話の前後に江戸時代と現代を結びつける仕掛けもあり、虚実の境がわざとあいまいになっている。挿し絵もユーモラスな味わいを支えている。(SY)
「立花たんぽぽ丸のこと」では、人を斬るのが嫌いな貧乏侍・六平太の前に、300年生きているサルが現れて古い刀をくれる。その刀は、六平太が構えただけで鼻にぽっとたんぽぽが咲き、相手が笑いだすので、戦わずして勝てるという不思議な力を持っていた。
「草冠の花嫁」の主人公である記憶喪失の流れ者・清七は豆腐屋で働いているが、油揚げを買いに来た少女と話すうちに少しずつ記憶が戻り、少女が仕える姫と清七がもとは夫婦だったことや、自分の本来の姿がキツネだったことを思い出す。
「おはるの絵の具」では、絵師見習いの新吉が春の野原で写生をしていると、おはるという少女に出会う。新吉が絵の具に不自由していると聞くと、おはるは絵の具を作ってきて自分の姿も描いてくれとたのむ。出世階段を登りはじめて忙しくなった新吉だが、おはるとの約束を思い出して絵を見せに行くと、おはるは少しずつ消えていき、雪の上に倒れていたのは虹色のチョウだった。
「龍ケ関」では、人間に変身したクマの上田角之進が、クマのすむ森を保全するため、ほかのクマたちの助けを借りて、川の氾濫を防ぐダムを築く。
「おせつネコかぶり」では、少女おせつが父親の怪我を治そうと、ネコたちが集まる不思議な時空に入り込み、特別な皮をかぶって自分もネコになってみる。
どれも不思議な趣の短編だが、よくまとまっていて、おもしろい。それぞれの話の前後に江戸時代と現代を結びつける仕掛けもあり、虚実の境がわざとあいまいになっている。挿し絵もユーモラスな味わいを支えている。(SY)