日本に暮らすイラン人の言語学者、アリババが飼っているペルシャ猫のシャイフは、長老族という特別な血筋で、人間やモノの言葉を聞くことができる。人とモノをつなぐことができるため、イランでは「バザールの猫」と呼ばれ愛されている。そのシャイフが、アリババの出張中に、世界の民芸品を扱う雑貨店「ひらけごま」に預けられる。そして毎晩、世界各地からやってきたモノたちの身の上話を聞くことになる。イランでミツバチの巣箱の蓋だった、鳥の絵が美しい「タイルばあや」。アフガニスタンの遊牧民の女の子が編んだ花嫁のラクダを飾る「ひも姉さん」。アマゾンの学校の先生が作った素焼きの動物「アマゾンのやんちゃたち」、そして、アフガニスタンの工房で作られた幻のヘラートグラス「青いグラスくん」。物語は、一晩ごとのモノたちの身の上話が、「ひらけごま」の男性店長石塚さんをはじめ、近所の日本語教室に通うイラン人の女の子のナグメ、向かいのレストランでシェフをしている翔子さん、その元教え子の日系ペルー人のぺぺといった、さまざまな人々の生活とつながりながら、展開されていく。
多様な文化をルーツとするモノや人びとが「ひらけごま」に集まってくる背景には、戦争や社会の変化など、世界各地の事情が絡み合っていることも見えてくる。しかし、猫のシャイフがそれぞれの事情やはるかな時空を俯瞰する視点となっているため、読みやすい。現代日本の一角で実現する多文化共生を描く、温かいファンタジー。(OM)
多様な文化をルーツとするモノや人びとが「ひらけごま」に集まってくる背景には、戦争や社会の変化など、世界各地の事情が絡み合っていることも見えてくる。しかし、猫のシャイフがそれぞれの事情やはるかな時空を俯瞰する視点となっているため、読みやすい。現代日本の一角で実現する多文化共生を描く、温かいファンタジー。(OM)