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小説

ヤマネコ・ドーム

津島 佑子

講談社(講談社文芸文庫)/2017年/384ページ/本体1700円/ISBN 978-4-06-290349-3

翻訳出版はありません。

 第二次大戦後、アメリカ兵と日本人女性との間に生まれたミッチとカズ。実の両親を知らない二人は、孤児を集めて育てることが自らの使命だと信じる「ママ」に引き取られて暮らしていた。ある日、孤児院の仲間の一人、女の子のミキちゃんが池で溺死する事件が起こる。ミッチやカズたちは、孤児院の近所に住む知り合いの少年がミキちゃんを池に突き落としたのではないかという疑いを抱いた。長じてのち、彼らは数年に一度起こる、オレンジ色の衣服を身に付けた若い女性の殺害事件の報道におびやかされるようになる。事故のとき、ミキちゃんはまさにオレンジ色のスカートをはいていたのだ。過去の事件とそれらの事件の間につながりはあるのか?

 ミステリアスな仕立ては、全編が各人物のモノローグで綴られる特異なスタイルによっていっそう謎を深め、眩暈を誘う。その中心に渦巻くのは、かつては第二次大戦の記憶、そしていまは原発事故の記憶を風化させ、忘却させようとする現代日本の風潮に対する呪詛であり、批判である。

 「ヤマネコ」扱いされた混血の孤児たちの姿を通して、著者は日本社会のひずみを撃つ。3.11後の状況を見据える、苛烈にして清新なレジスタンス文学の傑作だ。(NK)
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津島 佑子

津島佑子

1947年生まれ。1998年『火の山─山猿記』で谷崎潤一郎賞、野間文芸賞、2001年『笑いオオカミ』で大佛次郎賞、2005年『ナラ・レポート』で芸術選奨文部科学大臣賞、紫式部文学賞を受賞。2016年逝去。

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