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『コンニャク屋漂流記』の表紙画像

近畿

コンニャク屋漂流記

星野 博美

文藝春秋(文春文庫)/2014年/496ページ/本体810円/ISBN 978-4-16-790060-1

翻訳出版はありません。

 著者は自分の「ルーツ」を探しもとめて、祖父の代からさらに三代さかのぼり、東京、千葉、和歌山と先祖を訪ね歩いた。その記録を綴ったノンフィクションである。特に決まった目的地などなく、漂流するように時空を動き回って、多くの親族に会って、興味深い話を聞き出すことにより、日本近代史を背景にしたスケールの大きな家族年代記が書かれることになった。著者は東京の町工場の娘だが、漁師の末裔である。というのも祖父はもともと外房(千葉県の太平洋側)で漁師をしていて、その後、東京に出て町工場を始めたからだ。「コンニャク屋」という、およそ漁業とは関係のない奇妙な名前は、なぜか漁師だった祖父の家の屋号(家の称号)だった。著者は大好きだった祖父が残した手記を読み、その内容を手がかりにして調べを進め、「コンニャク屋」の祖先がはるばる紀伊地方(いまの和歌山県)から外房に移住してきたということを突き止めた。本書から鮮やかに浮かび上がるのは、個性的な漁師の家系の人びとの活力と笑いに満ちた庶民的な陽気な生き方である。そして、丹念な調査と精力的な取材によってそれを調べ上げ、記録した著者の筆致も発見の喜びに満ちて楽しげで、多くの読者の共感を呼ぶことになった。(NM)
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星野 博美

星野 博美

1966年東京都生まれ。作家、写真家。2001年『転がる香港に苔は生えない』で第32回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。2012年『コンニャク屋漂流記』で第63回読売文学賞随筆・紀行賞受賞。著書に『銭湯の女神』『愚か者、中国をゆく』等、写真集に『華南体感』他。

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