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  • 10歳から
  • 2000年以降

夜叉神川

安東 みきえ 著
田中 千智 装画

講談社/2021年/242ページ/ISBN 978-4-06-521852-5

翻訳出版はありません。

 「夜叉神」は人を食う鬼神ともいわれ、人の心に潜む「鬼のような気持ち」を象徴している。夜叉神川の流域を舞台に描いた5話の短編集。物語は川の上流から下流へと紡がれていく。

 第1話の「川釣り」では、主人公の少年「ぼく」が、中学に入ってから通い出した塾で人気者の辻くんに渓流釣りに誘われる。釣り場で、生き物の命をいたぶる辻くんの残虐さをとがめると、彼の態度が急変し、「おまえを駆除する」とぼくに迫って来る。川霧が立ち込め、得体のしれない不気味な声が聞こえてきたかと思うと、辻くんは逃れるように川に飛び込み、あわや溺れそうになったのをぼくが助ける。辻くんは化け物を見たとぼくに告げる。第2話の「青い金魚鉢」では、学校に通えなくなった小学6年生の少女が、自分の部屋にある古くていわくつきの金魚鉢に、意地悪した子の魂を閉じ込める。「鬼が森神社」では、夜叉神川の支流のほとりにある神社を舞台に、仲良しの同級生が劇団のオーデションに合格するのを願って、彼女のライバルに呪いをかける。「スノードロップ」は、連れ合いに先立たれた隣の偏屈なお爺さんが、夜叉神川の散歩道のベンチで自死しようとしているのを少年と犬が止める。「果ての浜」は、夜叉神川の近くに住む少年が、沖縄の波照間島で戦争のむごさを知る。誰の心にも芽生える邪悪な気持ちと優しさをていねいにくみとり、ちょっと怖くて不思議な物語に仕上げた文章が秀逸だ。(NA)
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安東 みきえ

あんどう みきえ
1953年、山梨県に生まれる。椋鳩十児童文学賞、野間児童文芸賞などを受賞。著作に『頭のうちどころが悪かった熊の話』、『天のシーソー』、『満月の娘たち』、『夕暮れのマグノリア』、『ゆめみの駅 遺失物係』、絵本に『星につたえて』(吉田尚令/絵)、『メンドリと赤いてぶくろ』(村尾亘/絵)などがある。

田中 千智

たなか ちさと
1980年、福岡県に生まれる。美術大学卒業後、個展やグループ展を開催。書籍装画や演劇ポスターなどを手がける。装画に『朝が来るまでそばにいる』(彩瀬まる/文)、『五つ星をつけてよ』(奥田亜希子/文)、『十六夜荘ノート』(古内一絵/文)、『幸福はどこにある』(フランソワ・ルロール/文 高橋啓/訳)など。

翻訳出版に関する連絡先

株式会社講談社
国際ライツ事業部

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