田舎の小さな町に、編み物上手のおばあさんがひとりで住んでいた。庭の大きなつばきの木に「あみものなんでもひきうけます」と札をかけ、町の人たちからたくさんの注文を受けて、せっせと編み物をする。春になり仕事を頼まれなくなっても,編み物が大好きなのでじっとしていられず自分の古い肩掛けをほどいては編み直す。そんなある日、大きな黒い蝶が飛んできた。おばあさんはその美しい羽の模様に感心し、同じ模様の肩掛けを編んでみようと考えた。ところが、やってみるとなかなか難しい。何度も編み直している間に不思議なことが起きた。編みかけの肩掛けがふわふわと浮き上がったのだ!どうやらその模様に飛ぶ秘密があるらしい。そこでおばあさんは飛行機の翼を編み、今年1年生になった孫のタツオが住んでいる大きな町の団地へと飛んでいこうと考えた。何日も何日も編み続けてようやく飛行機が完成!おばあさんは丸い月がきれいな夜,町に向けて出発する。
好奇心あふれるおばあさんを主人公に、日々の生活の中で魔法的なできごとが起きるエブリデイ・マジックの世界をたくみに描いた作品。子どもたちは自分たちの周りには不思議なことがたくさん潜んでいること、それを見つける楽しさがあることを知るだろう。村上勉は多くの作品で著者とコンビを組み、緻密な筆致で不思議な物語世界を描き出している。本作では、生き生きと描かれたおばあさんの表情が特に強く印象に残る。(SJ)
好奇心あふれるおばあさんを主人公に、日々の生活の中で魔法的なできごとが起きるエブリデイ・マジックの世界をたくみに描いた作品。子どもたちは自分たちの周りには不思議なことがたくさん潜んでいること、それを見つける楽しさがあることを知るだろう。村上勉は多くの作品で著者とコンビを組み、緻密な筆致で不思議な物語世界を描き出している。本作では、生き生きと描かれたおばあさんの表情が特に強く印象に残る。(SJ)