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グリックの冒険

斎藤 惇夫 作
薮内 正幸 画

岩波書店(岩波少年文庫)/2000年/358ページ/ISBN 978-4-00-114045-3

初版年 1970年

本作品は中国語(繁体字、簡体字)に翻訳されています。

 人間に飼われていたシマリスのグリックが、はるかな北の森には仲間のリスたちが棲んでいるという話を伝書バトのピッポーから聞いて、その森を目指して旅をする動物ファンタジー。前半となる「第1部」は、人間の家でいっしょに暮らしていた姉のフラックに見送られ、町のドブネズミのガンバとその仲間たちに出会い、クマネズミとの戦いに巻き込まれつつ、改めて自分の旅を決意するまでが描かれる。安全だが狭いカゴの中や、ごみごみとした町での時間が丁寧に描かれることで、グリックの中で自由や冒険へのあこがれがふくらんでいくのがわかる。

 後半の「第2部」では、動物園で出会ったシマリスののんのんとともに、「北へ、まっすぐ北へ!」と走り続ける2人の旅がスリル満点で展開される。畑や丘をこえるときにはネコやノスリに襲われ、台風にもみまわれる。川では乗り込んだ小舟が漂流し、何日も水上を流されてしまう。そして、すでに雪が積もる山をこえるときには、吹雪と眠気が2人を襲う。しかし、母のふるさとへ帰りたいという強い思いを抱くのんのんと互いに励まし合いながら、どんなに傷ついても、びしょぬれになっても、一途に北を目指すその姿は底知れぬ生命力を感じさせてくれる。変化に富んだ風景や擬人化された動物の動きを写実的に描き出す挿し絵も、物語に活力を与えている。

 続編に、本作で登場するドブネズミのガンバを主人公とする『冒険者たち』『ガンバとカワウソの冒険』があり、3部作として親しまれている。(OM)
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斎藤 惇夫

さいとう あつお
1940年、新潟県に生まれる。子どもの本の編集に長くたずさわる。日本児童文学者協会新人賞、野間児童文芸賞など受賞。著作に「ガンバの冒険」シリーズ、『河童のユウタの冒険』、『哲夫の春休み』、瀬田貞二についての講演録『子どもと子どもの本に捧げた生涯』、子どもの本についての講演録『わたしはなぜファンタジーに向かうのか』など。

薮内 正幸

やぶうち まさゆき
1940年、大阪府に生まれる。独学で動物の絵を描きはじめ、出版社で図鑑などの絵を担当した後、独立。産経児童出版文化賞など受賞。絵本に『くちばし』(ビアンキ/文 田中友子/訳)、『どうぶつのおやこ』、『しっぽのはたらき』(川田健/文)、図鑑に『野鳥の図鑑』、『野や山にすむ動物たち』など。2000年逝去。

翻訳出版に関する連絡先

株式会社岩波書店
編集局ライツマネジメント部

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