呪者の使い魔にされて、霊狐となった子狐の野火は、主の命により人の喉笛を噛み切り、自らも深手を負って夕暮れの野を猟犬に追われていた。里はずれの森に老婆と2人で暮す少女、小夜は、瀕死の野火をとっさに懐へかくまい、里人の出入り厳禁の屋敷に逃げ込む。そこで、幽閉状態の少年、小春丸に出会った。
冒頭からスリリングな展開ではじまり、三者三様の深い闇を背負った小夜と野火と小春丸は、領地争奪をめぐり憎しみあう隣国の領主同士の怨念と、呪術的な抗争に巻き込まれていく。
「狐笛」とは、強力な呪者が使い魔の霊狐を自在に操る笛のことで、霊狐は死ぬまでその笛の音の呪縛から逃れられない。幼い日に目撃した母惨殺の記憶の封印を解かれ、自らも土着の神々から継承した呪力を持つことから、小夜は使い魔を操る呪者によって度々命を狙われる。その窮地を、主の命に背いて霊狐の野火が救うのだ。
領主の隠し子であった小春丸の跡継ぎをめぐる策謀に、敵対する立場に置かれた小夜と野火の叶わぬ愛がさまざまに絡み合い、悲惨な結末さえ予感させながら物語は終盤に向かう。
呪力を持つ少女と、狐笛に呪縛された子狐の愛の行方は、はたしてどうなるのか?歯切れの良い文体が緊迫感を盛り上げ、読み手をぐいぐいと作品世界に引き込んでいく。満開の桜が白雲のように山肌をおおい、花びらが舞い散る春の野に、まるで幻影のようにのどかに繰り広げられる終章は、それまでと見事なコントラストをなし、作者の巧みな構成力に気持ちよく酔わされる。(NA)
冒頭からスリリングな展開ではじまり、三者三様の深い闇を背負った小夜と野火と小春丸は、領地争奪をめぐり憎しみあう隣国の領主同士の怨念と、呪術的な抗争に巻き込まれていく。
「狐笛」とは、強力な呪者が使い魔の霊狐を自在に操る笛のことで、霊狐は死ぬまでその笛の音の呪縛から逃れられない。幼い日に目撃した母惨殺の記憶の封印を解かれ、自らも土着の神々から継承した呪力を持つことから、小夜は使い魔を操る呪者によって度々命を狙われる。その窮地を、主の命に背いて霊狐の野火が救うのだ。
領主の隠し子であった小春丸の跡継ぎをめぐる策謀に、敵対する立場に置かれた小夜と野火の叶わぬ愛がさまざまに絡み合い、悲惨な結末さえ予感させながら物語は終盤に向かう。
呪力を持つ少女と、狐笛に呪縛された子狐の愛の行方は、はたしてどうなるのか?歯切れの良い文体が緊迫感を盛り上げ、読み手をぐいぐいと作品世界に引き込んでいく。満開の桜が白雲のように山肌をおおい、花びらが舞い散る春の野に、まるで幻影のようにのどかに繰り広げられる終章は、それまでと見事なコントラストをなし、作者の巧みな構成力に気持ちよく酔わされる。(NA)