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  • 12歳から
  • 2000年以降

狐笛のかなた

上橋 菜穂子 作
白井 弓子 画

理論社/2003年/342ページ/ISBN 978-4-652-07734-4

本作品は、中国語(繫体字、簡体字)、韓国語に翻訳されています。

 呪者の使い魔にされて、霊狐となった子狐の野火は、主の命により人の喉笛を噛み切り、自らも深手を負って夕暮れの野を猟犬に追われていた。里はずれの森に老婆と2人で暮す少女、小夜は、瀕死の野火をとっさに懐へかくまい、里人の出入り厳禁の屋敷に逃げ込む。そこで、幽閉状態の少年、小春丸に出会った。

 冒頭からスリリングな展開ではじまり、三者三様の深い闇を背負った小夜と野火と小春丸は、領地争奪をめぐり憎しみあう隣国の領主同士の怨念と、呪術的な抗争に巻き込まれていく。

 「狐笛」とは、強力な呪者が使い魔の霊狐を自在に操る笛のことで、霊狐は死ぬまでその笛の音の呪縛から逃れられない。幼い日に目撃した母惨殺の記憶の封印を解かれ、自らも土着の神々から継承した呪力を持つことから、小夜は使い魔を操る呪者によって度々命を狙われる。その窮地を、主の命に背いて霊狐の野火が救うのだ。

 領主の隠し子であった小春丸の跡継ぎをめぐる策謀に、敵対する立場に置かれた小夜と野火の叶わぬ愛がさまざまに絡み合い、悲惨な結末さえ予感させながら物語は終盤に向かう。

 呪力を持つ少女と、狐笛に呪縛された子狐の愛の行方は、はたしてどうなるのか?歯切れの良い文体が緊迫感を盛り上げ、読み手をぐいぐいと作品世界に引き込んでいく。満開の桜が白雲のように山肌をおおい、花びらが舞い散る春の野に、まるで幻影のようにのどかに繰り広げられる終章は、それまでと見事なコントラストをなし、作者の巧みな構成力に気持ちよく酔わされる。(NA)
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上橋 菜穂子

うえはし なほこ
1962年、東京に生まれる。1989年作家デビュー。文化人類学者として研究を続けるかたわら、多数の物語を執筆。野間児童文芸賞、巖谷小波文芸賞などのほか、アメリカ図書館協会バチェルダー賞、M・L・プリンツ賞オナー、国際アンデルセン賞作家賞などを受賞。著作に『精霊の守り人』からはじまる「守り人」シリーズ、『獣の奏者』、『鹿の王』、『狐笛のかなた』、『月の森に、カミよ眠れ』などがある。

白井 弓子

しらい ゆみこ
1967年、愛媛に生まれる。漫画家。同人誌として発表していた『天顕祭』が文化庁メディア芸術祭マンガ部門奨励賞を受賞し2008年に出版。漫画に『WOMBS(ウームズ)』『WOMBS CRADLE』『イワとニキの新婚旅行』『大阪環状結界都市』『ラフナス』など、『天顕祭』はアメリカ(タイトル『TENKEN』)、『WOMBS』はフランス、タイ、台湾、イタリアでも刊行されている。

翻訳出版に関する連絡先

株式会社理論社
海外ライツ担当
Email: rights@rironsha.co.jp
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