
小説
永遠の都
新潮社/2015年/全7冊:2984ページ/本体27000円/ISBN 978-4-10-330815-7
本作品は中国語に翻訳されています。
『永遠の都』はとても長い「大河小説」である。分量ではトルストイの『戦争と平和』にほぼ匹敵する。内容を見ても、昭和10年から22年までの日本を舞台に、軍国主義へと急速に傾斜していく歴史の流れを一方に置き、その中で時代に翻弄されながらも医学研究や発明や恋愛や芸術に携わって生の喜びを享受して生きていく人びとの平和な暮らしがもう一方にあって、その両者が渾然と絡み合いながら、悠々と進んでいくのだから、これはまさに加賀版『戦争と平和』に他ならない。
ここでは、二・二六事件、ベルリン・オリンピック、紀元2600年記念式典、太平洋戦争の開始、疎開、東京大空襲、敗戦、と歴史的事件が次々に生起していく。激動の歴史のカンバスを背景とした堂々たるリアリズムの歴史小説だが、その一方で、現代的な文学的手法を駆使した先鋭的な試みでもある。ここでは、さまざまな視点からの語りが交錯し、日記、手紙、新聞報道も引用され、二・二六事件当日については現実の進行を詳細な時系列で実録風に示すという手法も使われている。
この作品で加賀乙彦は、長編小説というジャンルが本来豊かに持っていた可能性を引き出した。近代日本の長編小説史上、まれに見る大きな達成の一つである。(NM)
ここでは、二・二六事件、ベルリン・オリンピック、紀元2600年記念式典、太平洋戦争の開始、疎開、東京大空襲、敗戦、と歴史的事件が次々に生起していく。激動の歴史のカンバスを背景とした堂々たるリアリズムの歴史小説だが、その一方で、現代的な文学的手法を駆使した先鋭的な試みでもある。ここでは、さまざまな視点からの語りが交錯し、日記、手紙、新聞報道も引用され、二・二六事件当日については現実の進行を詳細な時系列で実録風に示すという手法も使われている。
この作品で加賀乙彦は、長編小説というジャンルが本来豊かに持っていた可能性を引き出した。近代日本の長編小説史上、まれに見る大きな達成の一つである。(NM)

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